第11回サル疾病ワークショップ講演要旨

I サル類の循環器における臨床検査


1. 実験用サル類における心機能検査

揚山直英1),鯉江洋1,2),金山喜一2),酒井健夫2),小野文子3),山海直1)
1) 基盤研・霊長類医科学研究センター,2) 日大,3) 予防衛生協会

 心疾患,特に心不全や虚血性疾患は世界各国で疫学上大きな問題となってきている疾患であり,その病態解明,新規治療法開発研究はきわ めて重要である.近年,実験用サル類の心臓病態作出モデルを用いた前臨床研究も増加する傾向にある.しかし,未だサル類自体の心機能や心疾患について明ら かにされたとは言えない.心臓病態学,前臨床研究の観点からもサル類自体の心機能解析と共に,自然発症性の心疾患モデルを抽出することは極めて重要であ り,さらに心疾患モデルとしての構築が成されれば,医科学研究への多大なる貢献が期待される.

 我々はこれまで霊長類医科学研究センターで飼育されているカニクイザル・アフリカミドリザルにおいて心機能評価基準の樹立,心疾患発 生状況調査を目的として心機能検査をおこなってきた.今回はカニクイザル126頭 (雄53頭,雌73頭,年齢1.6 - 36.6歳,体重1.7 - 10.0 kg),アフリカミドリザル36頭 (雄11頭,雌25頭,年齢2.4 - 24.1歳,体重2.0 - 5.4 kg) を対象として行った心機能検査の方法およびその結果を紹介する.検査は心エコー図,心電図,胸部レントゲン,心房性ナトリウム利尿ペプチドおよび脳性ナト リウム利尿ペプチドの血中濃度測定を行った.さらに一部の個体には血圧検査,MRI検査も適宜加えて行った.

 検査の結果,アフリカミドリザルでは36頭中11頭において拡張型もしくは肥大型心筋症などが疑われる個体が検出された.カニクイザ ルにおいては心室中隔欠損症,右室二腔症,弁膜症,心筋症,心内膜炎などが疑われる個体が検出された.また,臨床症状を伴わない弁口の逆流を認める個体が 多数検出された.今後これら実験用サル類における心疾患の病態解析を進め,心臓病態機序の解明,新規治療法開発研究に寄与したいと考える.さらに,得られ た先天性疾患を用いて心疾患モデル動物として樹立の可能性も探っていきたい.

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