第11回サル疾病ワークショップ講演要旨

I サル類の循環器における臨床検査


2. ホルター心電計によるカニクイザル自然発生性不整脈の解析

坂本憲吾,大谷光嗣,若狭芳男,野村護 (株式会社イナリサーチ)


【目的】非臨床試験において,薬物誘発性不整脈を検索することの重要性が高まっている.しかし,これまでのサル毒性試験で行われているモンキーチェア拘束 下での短時間の心電図計測では,不整脈の詳細な検索は困難と考えられる.また,薬物誘発性不整脈を正しく評価するためには,自然発生性不整脈の解析は重要 である.そこで今回,サル一般毒性試験において,無拘束下で比較的長時間の安定した心電図測定を行うことを目的として,ホルター心電計の導入を検討した. 初めに,ホルター装着訓練に要する期間を検討し,その後,24時間の連続記録により自然発生性不整脈の発現状況を解析した.さらに,QT延長作用のある塩 酸ソタロール投与時のホルター心電図を,テレメトリー心電図と比較した.

【方法】実験1:カニクイザルにサル用ジャケットを1週間連続着用させて順化後,毎週1回,24時間連続で3週間目までホルター心電図 を計測し,ホルター装着の順化状況を観察した.同時に,ストレスの指標として血中コルチゾールを採取した.実験2:ホルター心電計装着順化を行ったカニク イザルを用い,24時間心電図を計測した.不整脈の発現状況を長時間心電図記録解析装置 HS1000 (FUKUDA M-E) を用いて自動あるいは手動で鑑別し,不整脈を各パターンに分類した.24時間ホルター心電図を用いてパワースペクトラム解析を行い,ビーグルと比較した. 実験3:カニクイザルにソタロール 5 mg/kg を単回経口投与し,テレメトリーにより心電図を計測した.1ヶ月間の休薬後,再度ソタロール 5 mg/kg を単回経口投与し,ホルター心電図を計測した.

【結果】実験1:順化1週目の心拍数 (回/分) は,ホルター装着後2時間以内に140以下に低下し,モンキーチェア拘束下の場合 (通常200以上) より明らかに低かった.順化第2およぴ3週の心拍数は,第1週と比べてさらに10ないし20低い推移を示した.ホルター群の血中コルチゾール値は,非順化 の対照群と比べ概ね低かった.実験2:カニクイザルで最も多く見られた不整脈は心室性期外収縮で,次いで,洞停止,補充収縮,房室ブロックの順に発現率が 高かった.洞停止および補充収縮は消灯時間帯の低心拍時に,また,心室性期外収縮は雄と比べ雌で多く発現する傾向を認めた.副交感神経活動の指標とされる 高周波成分 (HF),副交感神経により修飾された交感神経活動の指標とされる低周波成分 (LF) はビーグルに比べ振幅が小さく低値だった.交感神経活動の指標とされる LF/HF はビーグルに比べ振幅が大きく高値だった.カニクイザルの心拍数変動には副交感神経の影響が少なく,ビーグルのような明瞭な呼吸性不整脈は認められなかっ た.実験3:ソタロール投与後のQTcは前値と比べてテレメトリーでは約26%,ホルターでは約22%延長した.

【結論】心拍数および血中コルチゾール値の推移から,1週間でホルター装着に対する順化は可能であると考えられた.ホルターにより,種 々のタイプの自発性不整脈をとらえられることが明らかとなった.自発性不整脈の発現頻度には性差,年齢差がみられ,そられは,ヒトに近い傾向がみられた. また,ホルターにより,テレメトリーと同様にソタロール単回投与によるQTc延長が捉えられた.以上のことから,毒性試験における心電図の計測,不整脈の 解析には,ホルター心電計が極めて有用であると考えられた.

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