第11回サル疾病ワークショップ講演要旨

II サル類の循環器の病態


3. コレステロール負荷による動脈硬化カニクイザル

古藤正男,鈴木繁生,蟹澤幸一,大谷好美 (中外医科学研究所)


 動脈硬化症は生活習慣病として脳溢血や心筋梗塞といった高い死亡原因の基礎疾患として問題視されている.コレステロールを負荷した飼料で飼育したカニク イザルの1例が死亡し,剖検したところヒトの病態に酷似した動脈硬化病変が見られたので報告する.なお,死因は動脈硬化病変との関係は不明である誤嚥によ る窒息死であった.

【材料と方法】4〜5歳齢の中国産カニクイザル雄,複数例に4年間,2%コレステロール負荷固形飼料を給餌した.定期的に体重測定と血 中総コレステロールを測定した.死亡例を病理解剖した.ホルマリン固定後,定法によりHE染色標本を作製した.

【結果】コレステロール負荷固形飼料の給餌を開始したところ,血中総コレステロールは700 mg/dL以上に一旦上昇し,2ヶ月以降は200〜400 mg/dLを維持した.開始時3 kgであった体重は,漸増し死亡時には7 kgに達した.

肉眼所見では,胸部大動脈から腹部大動脈にかけて,全面にわたり血管壁の肥厚がみられた.血管内膜面には,灰黄色の丘状の隆起が長軸に そってみられ,隆起は腹部大動脈でより著明であった.

組織所見では,胸部から腹部大動脈にかけて,線維脂肪性粥腫 (fibrofatty atheroma) が病変の主座を示していた.即ち,胸部大動脈では,内膜は基質の増加により著しく肥厚し,内皮直下に脂肪滴の沈着と脂肪滴を貪食したマクロファージとリン パ球の浸潤が軽度にみられ,いわゆる線維斑 (fibrous plaque) が観察された.胸部大動脈では,上記胸部でみられた病変が増強してみられ,脂肪滴を貪食したマクロファージ浸潤下層にコレステリン結晶および顆粒状〜板状 の石灰沈着がみられた.さらに,Necrotic coreを中心に周囲を結合組織で覆う線維性蓋 (fibrous cap) が限局性に観察された.冠状動脈では,器質化した閉塞性血栓がみられた.

【考察】本病変は,ヒト粥状動脈硬化性病変のV型 (線維性粥腫病変) に類似していた.げっ歯類では血管病変に明確な粥状動脈硬化性病変を認めるには至らず,病態モデルとしては今回示したカニクイザルやミニブタなどが重要な 役割を果たすと考える.

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