第11回サル疾病ワークショップ講演要旨

話題提供


1. カニクイザルSE細胞移植で形成された奇形腫の免疫組織化学的研究

中村紳一朗 1,柴田宏昭 2,3,下澤律浩 3,田中裕次郎 2,林聡 4,北野良博 4,花園豊 2,寺尾恵治 3
(1 予防衛生協会,2 自治医科大学,3 基盤研霊長類センター,4 国立医療センター)

 サル類のES細胞はマウスのそれに比べ,ヒトと類似しており,再生医療を展開する上で有用と考えられている.しかしその応用のためには品質の適切なモニ タリングが必要である.すなわち自己複製能と三胚葉性分化能という異なるベクトルの保持が求められる.このうちES細胞の多分化能は,適切な動物への移植 実験を行い移植部位における奇形腫形成で検証可能である.本研究ではES細胞の移植先が同種動物または異種動物に関わらず,形成される腫瘍が三胚葉への分 化を示す奇形腫であることを確認,用いられたES細胞が分化能の観点で適切な品質を持っていることを証明する.GFP遺伝子を発現するカニクイザルES細 胞 (CMK6G) を免疫不全マウス (異種) またはカニクイザル胎仔肝臓 (同種) に移植し,それぞれに形成された腫瘍の性状を組織学的ならびに免疫組織化学的に検索した.

 マウスに形成された腫瘍は充実性と嚢胞状の部分が混在し,神経管,腺,骨,平滑筋,血管などに類似する構造を認めた.それぞれの構造 に一致してGFPが陽性だった.さらに神経管様構造の周囲の細胞はNSEに,平滑筋様構造の細胞はSMAに,腺様構造の細胞はAFPに対して陽性だった. 一方,カニクイザル胎仔細胞に形成された腫瘍は,肉眼的に嚢胞状を呈し,不整かつ大小不同の腺腔構造と,腺腔同士の間に平滑筋様の構造が観察された.これ らの構造はいずれもGFP陽性だった.また不整な腺腔構造はNSEとAFPに,平滑筋様構造はSMAに対して陽性だった.異種マウスと同種カニクイザルに 形成された腫瘍は,肉眼的性状は異なるものの,免疫組織化学的プロフィールとしていずれも三胚葉を持つ奇形腫であった.本研究で用いたCMK6Gは,ES 細胞として適切な分化能を保有していたことが明らかとなった.

戻 る