カニクイザルの子宮内膜症
 

国立感染症研究所 動物管理室
網 康至


子宮内膜症は、異所性の子宮内膜組織の増殖による疾患で、 menstrationが見られる動物に主として認められる。現在までにヒトをはじめ、アカゲザル、カニクイザル、ヒヒ、ブタオザル、アフリカミドリザル で発症例が報告されている。

用語としての子宮内膜症endometriosisは、内膜組織の認められる部位、程度により様々な修飾語を付けて用いられるが、子宮 筋層内に認められるものを特に腺筋症adenomyosisと区別して用いるのが通例である。成因が異なっていると考えられているのもその理由の一つであ る。

カニクイザルに認められる子宮内膜症は、その多くが骨盤腔内にとどまり、径約10 cm以内の血様内容物を容れるシストを形成し、卵巣、卵管、膀胱、大腸等と癒着していることが多い。また、腺筋症を伴うことが多いことも特徴である。症状 としては、周期的な (特に月経時の) 食欲不振、元気消失が一般的で、下腹部の触診で、腫瘤、肥大した子宮を認めることが診断の手がかりとなる。一般に、カニクイザルが子宮内膜症で死亡するこ とは稀で、癒着や肥大したシストによる結腸や尿管の狭窄などがその原因となる。

筑波霊長類センターで繁殖用として飼育されていた雌のカニクイザル約100頭について、退役後別の実験に用いた際に、解剖する機会を得 た。

この群における子宮内膜症の発症状況は、以下のようであった。発症は約30%の個体に認められ、そのうち腺筋症のみの発症率は約5%、 年齢は11歳から23歳、いずれのサルも長期間の薬物の投与、 ]線照射などの経歴はなく、帝王切開歴の有無、出産回数、産地と発症の相関は認められなかった。

例数の一番多かった15歳齢29頭中では、 9頭 (約31%に発症が認められたことからも、約30%が実験室内飼育カニクイザルにおける子宮内膜症の自然発症率と考えられる。