| 2) サル類における細菌性赤痢について | ||
| 株式会社 エーキューエス 高阪精夫 | ||
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赤痢という病名は赤い下痢、すなわち、血液が混じった下痢がみられる病気というのがその由来で、細菌性赤痢とアメーバ赤痢がある。細菌性赤痢(赤痢)はヒトとサル類にのみみられる感染症である。したがって、本病はサル類の健康管理の立場からだけでなく、公衆衛生上、人獣共通感染症予防の立場からも重要な病気のひとつである。 1) 原因 赤痢菌は腸内細菌科 (Enterobacteriaceae)のShigella属に属する菌である。Shigella属は生化学的性状と血清学的性状によって、A亜群
(志賀赤痢菌、Shigella dysenteriae )、B亜群(フレクスナー赤痢菌、S. flexneri )、C亜群(ボイド赤痢菌、S. boydii )および D亜群(ソンネ赤痢菌、S. sonnei ) の4亜群に分けられる。さらに、D亜群以外の3亜群は多くの血清型に分類されている。サル類から分離される菌種はB亜群が多い。 2) 疫学 赤痢菌は経口的に感染する。赤痢菌は糞便中に排泄され、食物、水、手指などを介して伝播する。1909年、Ravaut and Dopterがマカカ属サルの赤痢を報告して以来、サル類における赤痢菌分離例および赤痢の報告はほとんどが類人猿や旧世界ザルに関するもので、新世界ザルのものは少ない。原猿ではまれである。サル類の赤痢菌感染は、自然生息地域ではみられず、ヒトに捕らえられてから初めて感染することが確かめられている。新輸入サル類は本菌に感染している可能性が高い。また、本菌陽性ザルの多くは無症状保菌ザルである。ヒトにおける赤痢の発生は世界的に広くみられる。我が国の赤痢患者発生数は2001年824人、2002年(1〜11月)641人で、そのうちの過半数は海外旅行で感染したものである。また、我が国においてペット用の輸入サル類に起因した赤痢患者または起因したと思われる赤痢患者が、1974年、1979年および1993年に発生している。 3) サル類の症状、病変 潜伏期は2〜9日と考えられる。下痢(水様性、粘液性、粘血性、膿粘血性)、元気、食欲の消失、ときに嘔吐がみられる。発症例は無処置の場合、死亡することが多い。一般に、病変は回盲弁を境に大腸に限局してみられる。肉眼的には、粘膜の肥厚、浮腫、充血、出血、フィブリン様物質の付着あるいはびらんがみられる。ときに粘膜組織の欠損がみられる。組織学的には、カタル性炎、偽膜性炎および潰瘍性病巣の3型に分けられる。 4) 診断、予防、治療 確定診断は糞便や腸内容物からの赤痢菌の分離・同定による。サル類用、ヒト用の実用的なワクチンは開発されていない。サル類における感染を予防するためには、新輸入ザルや下痢ザルを中心に本菌感染例を摘発、隔離するともに適切に治療する。また、サル類を取り扱うヒトの着用衣類(とくにゴム手袋、長靴)、飼育器具・器材および排泄物の消毒を厳しく行う。感染ザルの治療には、rifampicin、chloramphenicol、ST合剤、fosfomycin、ampicillinなどの抗菌剤が用いられる。また、サル類からヒトへの感染予防には、ペット用としてサル類を飼育しないことが最高の手段である。 |